フットボーラーとメンタル
オランダの専門誌『Voetbal International』のwebサイトに面白い記事がありました。
Specialisten buigen zich over Ajax’ kroonjuwelen
この記事の主旨ですが、アヤックスのクラブ幹部たちは現在、18歳から20歳までの若手選手たちがその才能を生かし切っていないことに危機感を覚えているというものです。
アヤックスと言えば、タレント育成に長けているヨーロッパの名門クラブとして世界的な名声を得てきました。現在もユース世代までは各国際大会でも好成績を挙げているのですが、その後トップチームに上がってから活躍できない選手が増えてきています。
毎年毎年、ニューネームが登場し、1年もすると主力選手と成長し、他のビッグクラブへ移籍する。そしてその穴埋めはまた新たな若手が担う。一般的に思い浮かべるアヤックスのイメージはこんな感じだと思います。しかし近年、この方程式が当てはまらなくなってきているのです。
毎シーズン、ユースから何人かトップへ昇格させてもなかなかレギュラーにはなれない。そんなジレンマが最近のアヤックスにはあります。
この点についてマルティン・ヨル(Martin Jol)監督は、「メンタルの部分がとても重要になってきている」と語っています。個々の技術、身体的素質はいいものの、メンタル面で成長していない、未熟な選手が多いと言うのです。
「(フットボールへの)情熱、楽しみ、一途な気持ち、ボールを持った時の落ち着き、常に冷静でいること。これらはトップレベルの選手となる大きな要因であり、時間をかけて体得するものだ」
つまりチームトレーニングだけではなく、個々のメンタルトレーニングも幼い頃から重要であることをヨル監督は説いています。
この分野をいかに改善するか。そのヒントを得るため、先週アヤックスの幹部がアガシやヴィーナス姉妹、そして日本の錦織圭選手を生んだフロリダのIMGニック・ボロテリー・テニスアカデミーを訪れました。ジュニアの頃から1対1の過酷な勝負を強いられるのが、テニスというスポーツ。そのため、テニスではメンタルトレーニングが非常に進んでいるそうです。
現在、財政的危機が噂されるアヤックス(11/4のオランダサッカーと世界同時不況をご参照ください)。この危機を打破するには、自分たちが持つ「クラウン・ジュエル(kroonjuwelen)」、つまり将来性豊かな若い選手を育て一流のフットボーラーにし、他のビッグクラブへ売るしかありません。そのために必要なのが、先ずはメンタル面での育成なのでしょう。
しかし、これは何もアヤックスだけの問題ではありません。日本でも、先週のナビスコ杯決勝で問題になった川崎Fの表彰式での態度がそのメンタル面の弱さを露呈しました。その中でも特に目立ったのが、ガムを噛んだり、ふてくされた態度を終始見せた森選手でした。
この森選手、「(批判は)前々からの積み重ねがあったと思う」と自身で答えたように以前からその言動で「要注意人物」とされてきたプレーヤーでした。J1再昇格を果たした2005年以降、着実に強豪チームへ変貌を果たした川崎Fの中で、森選手は右サイドのキープレーヤーとして大きく成長しました。しかし残念ながら、メンタル面ではその成長に追いつくことはなかったようです。
小さい頃からの積み重ね。やはり、それがメンタル面では重要になってきます。川崎Fの問題を他人事とは捉えず、誰にでも起こり得ることだと認識して、将来を担う若きフットボーラーをメンタル面からも育成すること。それが、この問題を根本から解決することであり、日本サッカーの成長へつながるのだと思います。
